水道民営化について

漫然とネットの記事を読むようになって10年以上経つが、くだらない記事も良記事も同じようにすぐに記憶から消えてしまうくらい脳味噌がポンコツになってきたので、そろそろ読んだ記事の内容やそれについて思ったこと、日々の生活についてアウトプットしようと思う。まずは水道事業民営化について読んだことをまとめる。

<序章>
2016年の熊本地震で生活インフラが被害を受けたが、復旧が困難を極めたものの一つが水道管だったとのこと。
現在全国に張り巡らされている水道管の多くは、高度経済成長期に東京オリンピックに向けて整備されたもの。これらの水道管の耐久年数は約40年とされており現在は管路更新が迫られている状況。そこにきてあの地震があり、管路はいたるところで断裂。管路内部は鉄さびが酷く水道水は濁り、復旧が遅れる事態となった。

<水道事業についておさらい>
- 日本の水道事業者は大きく都道府県、市区町村、企業団、民営の4つがあり、全部で1200くらい存在する。
- 水道事業の収支は90%以上の事業者で黒字となり、黒字化する事業者の数は年々上がっている。
- 料金システムは逓増料金正。利用料の少ない過程の水道料金単価は、給水原価を下回っており、利用料の多い企業がそれを補填しているのが現状。
- 水道業務の一部(料金メーターの確認等)は民間企業が活用されており、これは黒字化の一因となっている。

現状、所得の再配分により国民全員に水道サービスが行き届き、かつ事業として上手くいっている。

<問題>
- 水道管の老朽化。日本全国全ての管路更新には約130年40兆円もが見込まれ、現在の更新率は0.8%。
- 水道事業収益の地域間格差。人口5万人を割る自治体は赤字の傾向。料金システム上、人口が少ない街の水道運営は採算が合わない。
- 水道施設の課題設備。全国の水道施設は本来発揮できる能力の6割しか使えていない。
- 有収水量の減少。人口減少や節水家電の開発により人は水利用量は減っている。リゾートホテル等民間企業自ら地下水を調達するケースもある。

一見健全に運営されているように見えるが実は山積みの問題に目をつむっているだけという状況。

<解決策>
■民営化
今国会(2018年12月)で水道法が改正され民間事業者による水道の管理・運営を可能になる。民営の方式はコンセッション。設備は公営で運営権を民間に委譲する。海外では既に多くの国で導入済み。民営化も進んでいる。イギリス90%, フランス80%, スペイン50%等々。

■民営化のメリット
- 資金の増加。株式市場から資金調達が可能に。公務員を削減して人件費をカットできる。民間企業のノウハウによって運営コストが下げられる。
- 設備・サービスが向上。上記資金の増加によって。
- 新規サービスの創出。公的機関の特権だった公共施設の運営事業に民間企業が参入することで新規ビジネスの創出が期待できる。グローバル水産業への足がかりとなる。
- というかそもそも官から民への流れは必然。鉄道道路通信郵便電気、、、なぜ水道だけ未だに民営化していない?

■民営化による近い将来の展望
二大水道メジャーと呼ばれる多国籍企業スエズ社」「ヴェオリア社」が参入する可能性が高い。

<民営化への疑問>
本当に民営化で現状の問題解決できるのか?人口減少社会で有収水量が減少する中、130年40兆円かかると言われる老朽化した管路の更新が求められている現状で、民営事業者にできる現実的な収益確保の方法とは以下になることが予想される。
- 公務員の削減
- 水道代を上げる
- 僻地からの撤退
- 管路更新後のばし

これらの結果は水道サービスを受ける住民にとってのメリットにはなっていない。海外では既に民営化失敗の事例がある。
- アトランタ、20年契約が4年で終了。人員は半分に。毎年値上げ。水質の悪化。
- パリ、水道代20年で178%増し。経営の不透明化。
- ボリビアコチャバンバ水紛争。結果、再公営化。
- その他、カザフスタン、スペイン等。2000 - 2017に掛けて835件の再公営化。

<新たな解決策>
簡単な解決策はない。
官だから、民だから、全てがうまく回るという訳ではない事例が散見されるようになった。例えばドイツにおける1990年代の官から民への流れは現在再考されているらしい。
これからは住民参加が必要とされる。日本全国隈なく今のレベルの品質を求めるのか都市部に絞るのか、そもそも畑の中にポツンとたつアパートのような現状の都市計画を改めるのかそこから再設計しないと多分全ての管路更新は無理。他にも過剰施設を閉鎖する等民営化しなくてもやれることはある。
上で「そもそも官から民への流れは必然。なぜ水道だけ未だに民営化していない?」と述べたが、水道と他の事業を一緒に考えていいかは実は難しい。アメリカフリントの例を見ても水道事業の運営を誤ると住民の健康に決定的な影響を与えてしまう。水は命の源。公共料金の支払いを滞納しても水道だけは簡単に止められないのは水が生きていく上で不可欠だと認識してくれているから。

 

<参考サイト>

水道民営化法案に関するデータ集。水道事業は90%以上が黒字、すでに一部民営化も持続性について懸念の声も | 貧乏な小澤司が、貧困・選挙・統計学を考える

水道民営化のメリット・デメリット - 思索器官

全国の水道事業体、「9割が黒字」というフェイク | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

民営化では水道事業は守れない